母乳栄養
母乳栄養(ぼにゅうえいよう)とは、栄養のために母乳を乳児に授乳すること。人工栄養と対となる。乳児に栄養を与える手段としてもっとも好ましい方法とされており、特に女性の乳房の乳首を直接乳児に吸わせることが望ましいとされている。哺乳類一般の授乳に関しては授乳、人工栄養に関しては粉ミルクを参照されたい。
以下、本稿では断りのないかぎり「授乳」を「母乳栄養」および「直接乳房から母乳を与えること」の双方の意味で用いる。また、「乳児」には「新生児」も含める。
概要
母乳は多くの乳児にとって最良の食事である(母親からの感染の心配がなく、子供に特定の先天代謝疾患がない場合)。賃金労働を子育てより優先する事により、あるいは医学上の問題で授乳を行わないあるいは出来ない母親もいる。例えば体液を通して感染するHIVやHTLV-1は、母乳によっても感染する可能性があり、これらに感染した女性は母乳栄養を避ける必要がある。同様に薬品によっては母乳に移行するものもあるが、ほとんどの場合わずかな量の移行に過ぎないので、母乳栄養しても安全であると考えられている。よって、ほとんどの女性は母乳栄養に問題がなく、医師も[要出典]政府も母乳栄養を強く勧めている。もっとも、多くの薬品についていまなお法律上、「授乳中は服用を避けるように」という表示が必要である。
乳児にとって授乳が最良の食事手段であるため、世界保健機関(WHO)や米国小児科学会(AAP)など、多くの政府機関や国際機関が母乳栄養を推奨している。日本においても厚生省が母乳推進運動を行っている。
- プロゲステロン
- エストロゲン
- 卵胞刺激ホルモン (FSH)
- 黄体形成ホルモン (LH)
- プロラクチン
- オキシトシン
- ヒト胎盤性ラクトゲン (HPL)
妊娠5ないし6か月になると、乳房は乳汁を生成し分泌できるようになる。出産まぢかには、黄色を帯びた初乳(コロストルム、コロストラム、colostrum)を分泌するようになる。これが新生児の飲む最初の母乳である。初乳には重要な母親由来の抗体が含まれ、子供自身の免疫系が発達するまで感染防御についての一時的な繋ぎとなる。また、後に分泌される乳汁に比べ、免疫力を高める作用がある核酸類の含有量が高いほか、タンパク質含量が高く、脂質と糖質が少ない。乳汁成分の成熟は子供が乳首を吸うことが刺激になっておこり、出産後3-4日すると脂質および糖質が増えてくる。
初乳が出た後は、乳汁は子供の必要量分泌されるようになる。つまり、子供が母乳を欲しがる頻度と量によってコントロールされる。授乳アドバイザーによっては、母乳づくりが維持されるとして4時間に一度は授乳すること勧めている。
母乳の性質は完全には解明されていないが、含まれる栄養素は比較的一定しており、それらは母親が食事として摂取したものから得られる。食事が不適切であれば、母親の身体そのものから得られる。水と脂質との比率は食事と環境によって左右される。最初に分泌される母乳は水分含量が多く、脂質含量が少なく、糖質が多い。授乳が進行するにつれ(乳房が空に近くなるにつれ)脂質含量が増える。母乳の合成は常に行われているので、乳房が完全に「から」になることはない。